2020.02.25 カテゴリ: 海運ニュース
STCW条約に基づく基本訓練(消火)の実証実験
国土交通省主催で2月21日愛媛県消防学校にてSTCW条約の基本訓練(消火)についての実証実験がおこなわれました。
最初に担当者から撮影はOKだがSNS等の掲載はNGと言われましたので、ほぼ文章となります。予めご了承ください

• 1978年の船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際(STCW)条約では、原則、ほぼすべての船員に生存技術や消火等に関する実地訓練を義務付けています。
今回、何故このような実証実験をしたかと言うと、実地訓練施設を新たに整備することは容易ではないため、現在、実地訓練を受講できる施設(地域)が限られています。そのため、全国各地の既存施設を利用した訓練機会を拡充するための一環として、この度、愛媛県消防学校の施設を使い、消火訓練の実証実験を行う事となりました。
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防火と消火(STCWコードA部の表A-6-1-2関係)
船舶火災の危険を最小にし、火災を含む非常事態の即応体制を維持するために最小限有しておくべき船員の能力として条約で規定されている次の訓練項目を行います。
・各種持運び式消火器(炭酸ガス、粉末、泡)による小規模火災の消火
・水噴射及び噴霧ノズルを用いた消火
・高発泡の泡が満ちた区画への進入 等
・オプション:自蔵式呼吸具を使用した訓練
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今回の参加者の顔ぶれを見て思ったのが船種別のこの問題へ対する温度差。
瀬戸内のフェリー関係、愛媛の有名所のタンカー船主は、だいたい参加していました。
カーゴで参加していたのは、私だけ。参加してみて、色々問題点が見えてきました。
STCWの生存訓練のプール飛び込みの件がクローズアップ(年寄りも飛び込むのか)されていますが、それ以前の消火の面でも問題点があります。
今回、愛媛県消防学校を国交省の努力で使わせてもらう事が出来ましたが、愛媛の消防学校で消防以外の我々のような業界外に使わせてもらえる回数としては年間2回程度(空き枠の問題) 他県の学校ならもう少し枠の可能性があると言う事ですが、場所を貸してもらうだけなので、講師の数、一回の受け入れ人数なども問題。都市部の消防学校は、空き枠がほぼないと言って過言ではない。
模擬訓練が始まり、まず最初に消防員装具(消防士がつける銀色のカッパのようなもの)を、5分以内に装着と言う訓練があります。
補助があっても良いので、それ自体は、難しい訓練ではありません。訓練全体も施設さえあれば難しい訓練ではないです。
☆問題点1 消防員装具の搭載義務がある船種は、ケミカル船、LPG船 タンカーにおいては近海の5000キロクラス(限定近海は必要なし)
疑問 そもそも、搭載していない装備の実地訓練が必要だろうか?もちろん、知識として必要です。横須賀の防災センターの教えとしては、これは訓練としてやるが、実際このような火災になれば、まず逃げてくださいが指導教官の教えです。
☆問題点2 CO2消火の訓練 CO2消火装置は沿海500GT以上の船舶に必要。
疑問 知識として、ないよりはあった方が良いが、これも搭載していない船が多数ある中で実地訓練が必要だろうか?
ただ、ドック中にエンジンルームでボヤ(電気火災)を経験し、粉消火器でエンジンルームが粉だらけになり、その後エンジン不具合(始動弁の固着)を経験したので、搭載義務はないですが、進宝丸にはエンジンルームへCO2消火器搭載しています
※エンジンルームで粉消火器を使うとエアー系統のラインに錆が生じ、始動弁などの固着につながります
火の手が小さい初期消火には、エアゾール系の消火器も有効です
☆問題点3 海上災害防止センターにてタンカー等の「危険物等取扱責任者」を取得した人もこの5年毎の基本訓練を受ける必要がある(現在のところ)
疑問 STCWの消火も火を使った本格的訓練ですが海上災害防止センターの訓練受講者なら全て知っている内容かつレベルが違う。言うならば、ルールだからしょうがないとは言え海技士試験を受け合格した後に、もう一度小型船舶を受ける感じの矛盾感。
☆問題点4 STCWについての最終案は、もうすぐ国交省から出る段階であり、業界が物申す時間もほとんど残っていないと言う事
疑問 タンカーと比べ、危険物などの資格を取らせに行く文化のないカーゴ船主は、コスト負担や交代要員など始まって文句言っても遅いと言う事を気づくべきではないでしょうか?
例 ニッスイマリン STCW(生存と消火) 29万8000円 5日コース + 宿泊費・交通費
今回、担当者から最後の質問が訓練に限ってとの念押しがあり、時間が早々に終わろうとしていたので、
手を上げ、せっかく国交省から来てくれているので、答えや解決を求めないので船主からの意見、問題点を聞いてくださいと
お願いすると国交省の方は、答えれる範囲でと聞いてくれました。
国交省も生存技術や消火等に関する実地訓練の義務という言葉は、STCW条約としても除外できない部分と前置きがあった中で
訓練内容・方法についての歩み寄りできる部分の模索は国交省側もしている感じは受け取れました。
実地訓練は、したくない(コストや交代要員的にも)のが本音ですが、やらなきゃいけないのであれば、
広範囲の訓練拠点と、年間の回数、全国一律料金が急務ではないかと思います。
また、現在の船員不足解消の為に未経験者の雇用が進んでいます。もちろん、乗ってみたが、想像と違った、船酔いする等
すぐに下船離職する事例も多々あります。
数十万かけてSTCWの基本訓練を行い、乗って数日で辞めたと言うのも多く出る可能性はあります。
議論の一つに上がっている、何十年も水着を着たことのないフェリーの売店のおばちゃんも、生存訓練でプールに飛び込むのかと言う問題もあります。
STCW条約は、国際条約です。それは、わかります。
内航船は国内のみを運航しPSCの監査が入る訳ではありません。
このSTCW条約の基本訓練を終了したか否かを調べるのは、運輸局の船員労政課及び労務官です。
内航船では、健康診断の有効期限忘れて切れてたと言うレベルもありうるのが内航船です。
訓練やりたくないからワァワァ言ってるのではありません。雇用や運航に関わり、船が止まる心配をしているのです。
国際的に危険なのは、タンカーですが、内航船的に危険(事故が多い)なのは、貨物船(ガットを含む)です。
ISMも必要ない、海上防災センターでの危険物取得も必要ない まずは、貨物船から取得させろの意見に
私は、納得し返す言葉もありませんでした。
もう一度言いますよ。カーゴの船主さん 始まって文句言っても遅いのです。
地方の運輸局に怒鳴り込んでも意味がありません。
船に来た労務官に言っても意味がありません。
何も見えてこない次の内航総連のあり方が議論されていますが、その前に我々船主の代表である内航総連の大事な最後の仕事ではないかと思います。
受け入れ施設、受け入れ施設講師の人数を考えると、まずは、船員手帳更新を迎えた、職員のみの取得とし、施設拡充やキャパシティの確認が取れた上で段階を踏んで部員へ広げていく事が大事であり、危険物取得のタンカー、ケミカル、LPG職員については、基本訓練更新コース(消火)のみでOKと言うような対応でも良いのでは、ないかと思います。
内航の実態に即した、可能な訓練のカタチを期待しています。
最初に担当者から撮影はOKだがSNS等の掲載はNGと言われましたので、ほぼ文章となります。予めご了承ください

• 1978年の船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際(STCW)条約では、原則、ほぼすべての船員に生存技術や消火等に関する実地訓練を義務付けています。
今回、何故このような実証実験をしたかと言うと、実地訓練施設を新たに整備することは容易ではないため、現在、実地訓練を受講できる施設(地域)が限られています。そのため、全国各地の既存施設を利用した訓練機会を拡充するための一環として、この度、愛媛県消防学校の施設を使い、消火訓練の実証実験を行う事となりました。
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防火と消火(STCWコードA部の表A-6-1-2関係)
船舶火災の危険を最小にし、火災を含む非常事態の即応体制を維持するために最小限有しておくべき船員の能力として条約で規定されている次の訓練項目を行います。
・各種持運び式消火器(炭酸ガス、粉末、泡)による小規模火災の消火
・水噴射及び噴霧ノズルを用いた消火
・高発泡の泡が満ちた区画への進入 等
・オプション:自蔵式呼吸具を使用した訓練
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今回の参加者の顔ぶれを見て思ったのが船種別のこの問題へ対する温度差。
瀬戸内のフェリー関係、愛媛の有名所のタンカー船主は、だいたい参加していました。
カーゴで参加していたのは、私だけ。参加してみて、色々問題点が見えてきました。
STCWの生存訓練のプール飛び込みの件がクローズアップ(年寄りも飛び込むのか)されていますが、それ以前の消火の面でも問題点があります。
今回、愛媛県消防学校を国交省の努力で使わせてもらう事が出来ましたが、愛媛の消防学校で消防以外の我々のような業界外に使わせてもらえる回数としては年間2回程度(空き枠の問題) 他県の学校ならもう少し枠の可能性があると言う事ですが、場所を貸してもらうだけなので、講師の数、一回の受け入れ人数なども問題。都市部の消防学校は、空き枠がほぼないと言って過言ではない。
模擬訓練が始まり、まず最初に消防員装具(消防士がつける銀色のカッパのようなもの)を、5分以内に装着と言う訓練があります。
補助があっても良いので、それ自体は、難しい訓練ではありません。訓練全体も施設さえあれば難しい訓練ではないです。
☆問題点1 消防員装具の搭載義務がある船種は、ケミカル船、LPG船 タンカーにおいては近海の5000キロクラス(限定近海は必要なし)
疑問 そもそも、搭載していない装備の実地訓練が必要だろうか?もちろん、知識として必要です。横須賀の防災センターの教えとしては、これは訓練としてやるが、実際このような火災になれば、まず逃げてくださいが指導教官の教えです。
☆問題点2 CO2消火の訓練 CO2消火装置は沿海500GT以上の船舶に必要。
疑問 知識として、ないよりはあった方が良いが、これも搭載していない船が多数ある中で実地訓練が必要だろうか?
ただ、ドック中にエンジンルームでボヤ(電気火災)を経験し、粉消火器でエンジンルームが粉だらけになり、その後エンジン不具合(始動弁の固着)を経験したので、搭載義務はないですが、進宝丸にはエンジンルームへCO2消火器搭載しています
※エンジンルームで粉消火器を使うとエアー系統のラインに錆が生じ、始動弁などの固着につながります
火の手が小さい初期消火には、エアゾール系の消火器も有効です
☆問題点3 海上災害防止センターにてタンカー等の「危険物等取扱責任者」を取得した人もこの5年毎の基本訓練を受ける必要がある(現在のところ)
疑問 STCWの消火も火を使った本格的訓練ですが海上災害防止センターの訓練受講者なら全て知っている内容かつレベルが違う。言うならば、ルールだからしょうがないとは言え海技士試験を受け合格した後に、もう一度小型船舶を受ける感じの矛盾感。
☆問題点4 STCWについての最終案は、もうすぐ国交省から出る段階であり、業界が物申す時間もほとんど残っていないと言う事
疑問 タンカーと比べ、危険物などの資格を取らせに行く文化のないカーゴ船主は、コスト負担や交代要員など始まって文句言っても遅いと言う事を気づくべきではないでしょうか?
例 ニッスイマリン STCW(生存と消火) 29万8000円 5日コース + 宿泊費・交通費
今回、担当者から最後の質問が訓練に限ってとの念押しがあり、時間が早々に終わろうとしていたので、
手を上げ、せっかく国交省から来てくれているので、答えや解決を求めないので船主からの意見、問題点を聞いてくださいと
お願いすると国交省の方は、答えれる範囲でと聞いてくれました。
国交省も生存技術や消火等に関する実地訓練の義務という言葉は、STCW条約としても除外できない部分と前置きがあった中で
訓練内容・方法についての歩み寄りできる部分の模索は国交省側もしている感じは受け取れました。
実地訓練は、したくない(コストや交代要員的にも)のが本音ですが、やらなきゃいけないのであれば、
広範囲の訓練拠点と、年間の回数、全国一律料金が急務ではないかと思います。
また、現在の船員不足解消の為に未経験者の雇用が進んでいます。もちろん、乗ってみたが、想像と違った、船酔いする等
すぐに下船離職する事例も多々あります。
数十万かけてSTCWの基本訓練を行い、乗って数日で辞めたと言うのも多く出る可能性はあります。
議論の一つに上がっている、何十年も水着を着たことのないフェリーの売店のおばちゃんも、生存訓練でプールに飛び込むのかと言う問題もあります。
STCW条約は、国際条約です。それは、わかります。
内航船は国内のみを運航しPSCの監査が入る訳ではありません。
このSTCW条約の基本訓練を終了したか否かを調べるのは、運輸局の船員労政課及び労務官です。
内航船では、健康診断の有効期限忘れて切れてたと言うレベルもありうるのが内航船です。
訓練やりたくないからワァワァ言ってるのではありません。雇用や運航に関わり、船が止まる心配をしているのです。
国際的に危険なのは、タンカーですが、内航船的に危険(事故が多い)なのは、貨物船(ガットを含む)です。
ISMも必要ない、海上防災センターでの危険物取得も必要ない まずは、貨物船から取得させろの意見に
私は、納得し返す言葉もありませんでした。
もう一度言いますよ。カーゴの船主さん 始まって文句言っても遅いのです。
地方の運輸局に怒鳴り込んでも意味がありません。
船に来た労務官に言っても意味がありません。
何も見えてこない次の内航総連のあり方が議論されていますが、その前に我々船主の代表である内航総連の大事な最後の仕事ではないかと思います。
受け入れ施設、受け入れ施設講師の人数を考えると、まずは、船員手帳更新を迎えた、職員のみの取得とし、施設拡充やキャパシティの確認が取れた上で段階を踏んで部員へ広げていく事が大事であり、危険物取得のタンカー、ケミカル、LPG職員については、基本訓練更新コース(消火)のみでOKと言うような対応でも良いのでは、ないかと思います。
内航の実態に即した、可能な訓練のカタチを期待しています。
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