2020.09.03 カテゴリ: ペンキ概論
ウレタン塗装についての一考察
船に塗装をする場合、ウレタン仕様だと言うと、贅沢だもったいない。
2液性だから扱いがめんどくさい。などの意見もあると思います。
また、見た目(艶)でウレタンを選択する船主さんもいると思います。
最近では、新造時にハウスの白とマストは、ウレタン塗装で、あとはラバー、アクリルでと言う船主さんも多く見受けられます。
私は、見た目(艶)などは、あまり気にならず、防錆の観点からウレタンを選択しました。
※ウレタン塗装に錆止め効果はありません。なぜ防錆かはあとで説明します
弊社、進宝丸の塗装仕様
関西ペイントマリン
ウインチ ウレタン塗装(計器色)
ハッチ・コーミング ウレタン塗装(N6 グレー)
ハウス及びマスト ウレタン塗装(白)
外板及びその他は、塩ゴム仕様
新造時のハッチ塗装
工場出荷はエポキシ塗装状態です。艶など気にしなくても、やはりきれいです。

7年目を迎え、7月末に新造から初めて、ハッチ総塗りをしました。6年間一度も塗らずにほとんど発錆がありません。

2液性は、全混ぜが確実です。小出しの場合は、まず一斗缶から撹拌後4kg缶などに分けておくと扱い安いです。
木の棒でこねくり回してもしっかりと混ざりません。力任せに一斗缶回しても一緒です。撹拌機を使いましょう。
専用の撹拌機でなくとも安い電動ドリルと撹拌棒で十分です。ただし古いエポキシはトルクがいります

ドックだとエアレスで吹付けやすくする為にシンナーを多用しますが、メーカー的にはNGで、入れても多少です。
今回はノーシンナーで塗りました
左がウレタン上塗り 右が6年前のウレタン塗装

ウレタン塗装の利点
①硬化剤を使う2液性の為、塗膜が硬く防水性の向上、傷に強く素地が侵されにくい傾向がある。
よって防錆効果向上が見込める。
②ペンキ屋さんもウレタン塗装の場合、下地処理やホコリ、表面湿度など神経を使うので嫌がられますが、
その分丁寧に塗らざるを得ない。よって、防錆効果向上が見込める。
③総塗りするような場所(ハッチやハウス)では塗装インターバールを大きく取れる。
※進宝丸では、ハッチ7年目で初めて総塗り。ハウス、マストは、新造当時のままですが、ほとんど発錆がありません。
またコーミングに関しては、ウレタン塗装+板で遮蔽しているので、ほぼ新造当時の塗装状態です。
ウレタン塗装のデメリット
①塗料代が高い。ラバーやアクリルと比べ 約2.5倍の値段。
②ランニング中の扱いがシビア。配合量やタッチアップの際の下地の表面水分、ホコリなどで剥がれが起こりやすい。
③艶はあるが、表面が滑りやすく。デッキなどに使う場合は、ノンスリップ塗装にする必要あり。
④ペンキ屋さんが嫌がる。建造ドックもあまりいい顔しない。
もう一度書きますが、ウレタン塗料に錆止め効果はありません。ただ、塗料の特徴をうまく利用すると長期防錆に効果があると
私は、思います。
これは、ウレタンを利用した防錆ですが、船主さんによっては新造時の塗装に上塗りなしでエポキシ仕上げと言うやり方があります。ハウス、外板などの場所以外で上塗り工程でもう一度、エポキシを上塗りをする。
新造エポキシ仕上げのメリット
①硬化剤を使う2液性の為、塗膜が硬く防水性の向上、傷に強く素地が侵されにくい傾向がある。
また防錆剤も入っている為、防錆効果向上が見込める。
②上塗りの工程と予算をエポキシに変えるだけなので、ほぼ追加なしで防錆効果を向上できる。
③下地がしっかりしているので基本的に錆びにくい
新造エポキシ仕上げのデメリット
①1年くらいするとチョーキング現象がおこる(白い粉が噴出した状態)
②艶がない。新造っぽく見えない。
ウレタンについて一部船乗りの間違った知識
【誤】ウレタンを塗るなら、新造から1年か2年くらい経って、ラバー・アクリルがしっかり固まってからの方が良い。
私も耳にしたことがありますが、間違いです。基本的にラバーやアクリルの上には、塗る事はできません。
数年経って、完全硬化状態の塗膜の上に自己責任の上でしたら可能だと思います。
【誤】ウレタンでタッチアップすると、すぐに剥がれる
密着を良くするために、目荒しや下地の水分除去、ホコリなどの除去は、ラバーやアクリルよりシビアです。
これは塗料が悪いのではなく、塗る段階の準備不足です
塗装、塗料については、教科書がないのでベテラン中心に多くの我流があります。
カレーと一緒で、取説通りが一番正しいやり方であり一番効果的。
日夜研究に研究を重ねたメーカー技術者の努力を報い、
塗料の効果を最大限発揮させる為にも用法用量は、守ってください
皆さんは、塗料のデーターシートSDS(MSDS)を利用していますか?



各メーカーのサイトからダウンロードできます。
関西ペイントマリン データシート
各メーカー 技術・営業の皆さん、いくら良いペンキを開発しようと、
使っている現場に周知しなければ、効果は得られません。
船員さんは、ビックリするくらい目分量です。
硬化剤を多めに入れると防錆効果が増すと思っている人もいます。
中には、2液性塗料と1液性塗料の違いすら分からず塗っている人もいます。
もう少しわかりやすい表示と現場での基礎知識になる船員向け塗装マニュアル、セミナーなどよろしくお願いします。
そして上塗りが塩ゴムからアクリルへシフトし、どのメーカーも結果が悪く悪戦苦闘していますが
関西ペイントマリンだけは、現在も塩ゴム上塗り塗料を供給していますので、
新造時アクリルの失敗を避けたい方は、関西ペイントマリンの塩ゴムも一考です。
進宝丸では、塗装の失敗リスクを避ける為、以下の仕様になっています。
バラストタンク 日本ペイントマリン ノア
清水タンク 中国塗料 クリーンキープ
外板・船底・その他 関西ペイントマリン
試験塗装 船底 中国塗料 シープレミア3000Plus
以上は、私の船乗り人生20年からの考察ですので、異論反論もあるかもしれませんが、参考になれば幸いです。
私は、サビ打ち、ペン塗り大好きな弊社会長の下で働いていたので、サビ打ち、ペン塗りが大嫌いです。
朝から昼までサビ打ち。昼から錆止め2回塗り、そして上塗り1回。それが仮バースでの1日です。
ですので、いかに効果的で効率的な方法はないかといつも考えていました。
サボると楽するは違います。楽をしたいから知恵がでる。
興味を持って取り組むから、嫌な作業も別な意味をもって楽しくなる。
ただし、夏のペン塗りは、湿度も高いし塗装には適さず熱中症リスクもあるので控えましょう。
関西ペイントマリン株式会社
中国塗料株式会社
2液性だから扱いがめんどくさい。などの意見もあると思います。
また、見た目(艶)でウレタンを選択する船主さんもいると思います。
最近では、新造時にハウスの白とマストは、ウレタン塗装で、あとはラバー、アクリルでと言う船主さんも多く見受けられます。
私は、見た目(艶)などは、あまり気にならず、防錆の観点からウレタンを選択しました。
※ウレタン塗装に錆止め効果はありません。なぜ防錆かはあとで説明します
弊社、進宝丸の塗装仕様
関西ペイントマリン
ウインチ ウレタン塗装(計器色)
ハッチ・コーミング ウレタン塗装(N6 グレー)
ハウス及びマスト ウレタン塗装(白)
外板及びその他は、塩ゴム仕様
新造時のハッチ塗装
工場出荷はエポキシ塗装状態です。艶など気にしなくても、やはりきれいです。

7年目を迎え、7月末に新造から初めて、ハッチ総塗りをしました。6年間一度も塗らずにほとんど発錆がありません。

2液性は、全混ぜが確実です。小出しの場合は、まず一斗缶から撹拌後4kg缶などに分けておくと扱い安いです。
木の棒でこねくり回してもしっかりと混ざりません。力任せに一斗缶回しても一緒です。撹拌機を使いましょう。
専用の撹拌機でなくとも安い電動ドリルと撹拌棒で十分です。ただし古いエポキシはトルクがいります

ドックだとエアレスで吹付けやすくする為にシンナーを多用しますが、メーカー的にはNGで、入れても多少です。
今回はノーシンナーで塗りました
左がウレタン上塗り 右が6年前のウレタン塗装

ウレタン塗装の利点
①硬化剤を使う2液性の為、塗膜が硬く防水性の向上、傷に強く素地が侵されにくい傾向がある。
よって防錆効果向上が見込める。
②ペンキ屋さんもウレタン塗装の場合、下地処理やホコリ、表面湿度など神経を使うので嫌がられますが、
その分丁寧に塗らざるを得ない。よって、防錆効果向上が見込める。
③総塗りするような場所(ハッチやハウス)では塗装インターバールを大きく取れる。
※進宝丸では、ハッチ7年目で初めて総塗り。ハウス、マストは、新造当時のままですが、ほとんど発錆がありません。
またコーミングに関しては、ウレタン塗装+板で遮蔽しているので、ほぼ新造当時の塗装状態です。
ウレタン塗装のデメリット
①塗料代が高い。ラバーやアクリルと比べ 約2.5倍の値段。
②ランニング中の扱いがシビア。配合量やタッチアップの際の下地の表面水分、ホコリなどで剥がれが起こりやすい。
③艶はあるが、表面が滑りやすく。デッキなどに使う場合は、ノンスリップ塗装にする必要あり。
④ペンキ屋さんが嫌がる。建造ドックもあまりいい顔しない。
もう一度書きますが、ウレタン塗料に錆止め効果はありません。ただ、塗料の特徴をうまく利用すると長期防錆に効果があると
私は、思います。
これは、ウレタンを利用した防錆ですが、船主さんによっては新造時の塗装に上塗りなしでエポキシ仕上げと言うやり方があります。ハウス、外板などの場所以外で上塗り工程でもう一度、エポキシを上塗りをする。
新造エポキシ仕上げのメリット
①硬化剤を使う2液性の為、塗膜が硬く防水性の向上、傷に強く素地が侵されにくい傾向がある。
また防錆剤も入っている為、防錆効果向上が見込める。
②上塗りの工程と予算をエポキシに変えるだけなので、ほぼ追加なしで防錆効果を向上できる。
③下地がしっかりしているので基本的に錆びにくい
新造エポキシ仕上げのデメリット
①1年くらいするとチョーキング現象がおこる(白い粉が噴出した状態)
②艶がない。新造っぽく見えない。
ウレタンについて一部船乗りの間違った知識
【誤】ウレタンを塗るなら、新造から1年か2年くらい経って、ラバー・アクリルがしっかり固まってからの方が良い。
私も耳にしたことがありますが、間違いです。基本的にラバーやアクリルの上には、塗る事はできません。
数年経って、完全硬化状態の塗膜の上に自己責任の上でしたら可能だと思います。
【誤】ウレタンでタッチアップすると、すぐに剥がれる
密着を良くするために、目荒しや下地の水分除去、ホコリなどの除去は、ラバーやアクリルよりシビアです。
これは塗料が悪いのではなく、塗る段階の準備不足です
塗装、塗料については、教科書がないのでベテラン中心に多くの我流があります。
カレーと一緒で、取説通りが一番正しいやり方であり一番効果的。
日夜研究に研究を重ねたメーカー技術者の努力を報い、
塗料の効果を最大限発揮させる為にも用法用量は、守ってください
皆さんは、塗料のデーターシートSDS(MSDS)を利用していますか?



各メーカーのサイトからダウンロードできます。
関西ペイントマリン データシート
各メーカー 技術・営業の皆さん、いくら良いペンキを開発しようと、
使っている現場に周知しなければ、効果は得られません。
船員さんは、ビックリするくらい目分量です。
硬化剤を多めに入れると防錆効果が増すと思っている人もいます。
中には、2液性塗料と1液性塗料の違いすら分からず塗っている人もいます。
もう少しわかりやすい表示と現場での基礎知識になる船員向け塗装マニュアル、セミナーなどよろしくお願いします。
そして上塗りが塩ゴムからアクリルへシフトし、どのメーカーも結果が悪く悪戦苦闘していますが
関西ペイントマリンだけは、現在も塩ゴム上塗り塗料を供給していますので、
新造時アクリルの失敗を避けたい方は、関西ペイントマリンの塩ゴムも一考です。
進宝丸では、塗装の失敗リスクを避ける為、以下の仕様になっています。
バラストタンク 日本ペイントマリン ノア
清水タンク 中国塗料 クリーンキープ
外板・船底・その他 関西ペイントマリン
試験塗装 船底 中国塗料 シープレミア3000Plus
以上は、私の船乗り人生20年からの考察ですので、異論反論もあるかもしれませんが、参考になれば幸いです。
私は、サビ打ち、ペン塗り大好きな弊社会長の下で働いていたので、サビ打ち、ペン塗りが大嫌いです。
朝から昼までサビ打ち。昼から錆止め2回塗り、そして上塗り1回。それが仮バースでの1日です。
ですので、いかに効果的で効率的な方法はないかといつも考えていました。
サボると楽するは違います。楽をしたいから知恵がでる。
興味を持って取り組むから、嫌な作業も別な意味をもって楽しくなる。
ただし、夏のペン塗りは、湿度も高いし塗装には適さず熱中症リスクもあるので控えましょう。
関西ペイントマリン株式会社
中国塗料株式会社
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